コラム

問題が解けないのは、「要因の数」を見誤っているから

こどものひらめきのイメージ

「原因は一つに違いない」——そう思い込んだとたん、思考はぴたりと止まる。
仕事でトラブルが起きたとき、人間関係がうまくいかないとき、私たちはつい「犯人探し」をしてしまう。一つの原因を特定して、それを取り除けばすべて解決する——そんな単純な構図を求めてしまうのだ。しかし現実の問題は、たいてい複数の要因が絡み合っている。 数学教育者の芳沢光雄氏は、著書『数学的思考法』(講談社現代新書、2005年)の中でこう述べている。問題を解決しようとするとき、まず「要因がいくつあるのか」に意識を向けることが重要だ、と。
数学の問題でも、変数が一つのときと二つのときでは、解き方がまったく変わる。要因が一つなら単純な方程式で済むが、二つ以上になると連立方程式や場合分けが必要になる。これは日常の問題でも同じだ。要因の個数を正しく見積もれないまま「解法」だけを当てはめようとするから、いつまでたっても解決しない。 たとえば「売上が伸びない」という問題に対して、「営業が弱いからだ」と一つに決めつけると、商品力・価格・タイミング・競合環境といった他の要因が見えなくなる。結果として、的外れな対策が繰り返される。
まず立ち止まって問う。「この問題、要因はいくつある?」——その一言が、思考を整理する出発点になる。要因の個数を丁寧に数えることは、解決への遠回りではなく、最短ルートを見つけるための地図を手に入れることだ。

参考文献
芳沢光雄『数学的思考法 ―説明力を鍛えるヒント―』講談社現代新書、2005年

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